★鎌倉淡水魚紀行★ 神戸川物語(第3話)7~8月・盛夏の美しいアユ達の戦い
予言します。今年の流行語大賞は「猛暑」。もうこれで決まりでしょ!
この猛暑続きで人間も世の中もグダグダですが、そんな暑さをもろともせずウチのゴーヤとオクラだけは元気。さすが “夏野菜” という肩書だけあって、よくもまぁ毎日毎日シッカリ実をつけているな~と感心してしまう。
私がアユの撮影場所に選ぶこの神戸川の脇道は、日が高くなると日陰がなくなり、そこはまさに炎天下の地獄道!強烈な日射しが容赦なく突き刺さりますが、季節野菜を彩る畑とアユで賑わう川に挟まれ、草いきれのこもる未舗装の脇道はどこか昭和の懐かしさを感じさせてくれます。
さて、盛夏の神戸川のアユ達はすっかり成魚になり、2つの大きな変化が表れるようになります。
まず1つ目はアユの見かけで、シンボルでもある黄色の斑紋がくっきり目立ち全体的にも美しい体色になります。そしてもう一つはアユの性格で、成魚になると縄張り意識が強くなり餌場となる苔岩に自分の縄張りを持つようになります。
前回の記事(第2話)では、初夏の若アユ達が群れで賑わう様子を書きました。それが盛夏になると、成長した個々のアユ達の縄張り争いにフォーカスを当てるようになります。このように季節とアユの成長に応じて、撮影テーマ(どういう光景を撮りたいか)も大きくが変わっていきます。
それだけアユを語るには「夏」は重要であって「神戸川のアユは夏なしには語れない!」といっても決して過言ではないでしょう。
因みに1匹のアユが持つ縄張りの範囲は、ここ神戸川のアユを見る限り、おおよそ苔岩一個分(50センチ四方ぐらい)を持ちたがるようです。もしそこに別のアユが侵入しようなら、もう地主は怒り心頭!そのアユを排除すべく執拗に追いかけ回す光景が見られます。本当ならNo.1の強いアユが縄張りを独占したいとこでしょうが、No.2、No.3も次々に侵入しもう巴戦状態に。挙句の果てには、格下のアユ達が群れがどっと押し寄せ、縄張りはゴチャ混ぜに・・・。それを炎天下の中、四六時中ずっとやっているわけですから、縄張りを持ち続けるアユも大変だな~と思いました。
こんな習性を利用したのに “アユの友釣り” という釣法があります。
まずは1匹の活アユを用意し、そこに専用の仕掛けを装着します。その仕掛けのついたアユを苔岩に送り込むと、そこを縄張りをもったアユが攻撃し、その際に針に引っ掛かってしまうという・・・まさに神業的な釣法です。通常「釣りの仕掛け」は、“魚の捕食“ を前提に考えられているのが一般的ですが、このアユの友釣りに関しては全く異なる次元での発想から成立しております。
ただ友釣り釣法の起源や発祥の地といったルーツは、諸説ありすぎて未だに特定されていませんが、先人たちはこれらの縄張り争いの様子をみてこのような発想に至ったのでしょう(アユを釣る文化は江戸時代にもあったそうだが、その釣法については明らかにされていません)。