▲紅富士(稲村ケ崎)・・・・
撮影時間は、真冬の早朝(日の出前)のたった1分間! 根気を要しますが喜びも感動もひとしお。
富士山好きの人なら、一度はチャレンジしてみたい紅富士!いわば富士山撮影における登竜門の一つといえます。
太陽がまだ届かないシアン調の寒い風景に、富士山頂から徐々に紅色に染まっていく美しさは、この時この場に居合わせた者だけに与えられるご褒美といったところでしょうか。
真冬の早朝にちゃんとそこへ出向く習慣をつければ、その努力と根気に見合った成果が得られ、その達成感に浸りながら飲むコーヒーは格別に旨いです。
▲晴天富士(稲村ケ崎)・・・・
これぞ稲村ケ崎のスタンダードであり王道でもあるパノラマ絶景。
撮影時間は(もし晴天の青色風景を撮りたい場合)順光である午前中がお薦め。晴天だけでなく、波(つまり風)も味方につけるとGOODです!
午後~夕方に向けて逆光になるので不向き(←幻想的な風景を狙う中級~上級者向け)。
▲夕富士(稲村ケ崎)・・・・
撮影時間は、日没後~30分ぐらい。
夕暮れ後に浮かび上がる山々の稜線は美しいですが、それだけではイマいちパッとしません。
そんな宵闇(よいやみ)の湘南に “ライトの明かり” が浮かび上がることで、初めて「夜の稲村ケ崎」が表現されます。
私が思うベストな時期は、江の島灯台がライトアップれる時期(11月~1月)と休祭日がらみ(車の渋滞でライトが湾岸線を連なりキレイ)がオススメ。「自然美」と「人工美」の異質なコラボレーションが楽しめます。
改めて紹介します。
ここは稲村ケ崎(いなむらがさき)といい、鎌倉市内で富士山が見れる景勝地の1つです。
左手には相模湾・・、中央には江の島・・、右手には湾岸線・・、そして背景には伊豆半島から箱根へと山々が連なり、それら仕上げに富士山がキッチリまとめている。そんな数々の名所を欲しいがままに1枚におさめる事ができるパノラマ絶景が、ここ「稲村ケ崎」の魅力なのかもしれません。
しかし、不思議な事にこの壮大な景色の寄せ集めだけでは、(写真として)イマイチぱっとしません。この中に、小さく粒々な被写体(波・雲・鳥・サーファー・釣人・観光客・湾岸沿いを走る車のヘッドライトやテールランプ・建築物・信号・江の島灯台などなど)がとても重要な役割をしております。また山ひとつとっても、手前から湘南平、足柄山地、金時山、明神ヶ岳、明星ヶ岳、箱根山などなど、様々な山々が存在し、またそれら濃淡が重なり合い一つの山景色を作り上げています。
これら名脇役が入るか否かで、写真のまとまり方や風景の意味合いが大きく変わってしまうのです。
これを言ったらヨーロッパのツーリストに怒られてしまうかもしれませんが、東洋のモンサンミッシェル(江の島)と東洋のマッターホルン(金時山)、そして東洋のアマルフィ―(海岸沿いとその店並み)といったところでしょうか・・・(※)。
※因みに、
①モンサンミッシェル(=フランス西海岸の小島に建てられた大聖堂/世界遺産)、②マッターホルン(=アルプス山脈の一つで、スイスとイタリアの国境にある4000m級の山)、③アマルフィ―(=南イタリアのソレント半島にある海岸/世界遺産)の有名な観光地のことですね。
ただ、この場に何度通ってても、こんな全裸で率直な富士山は珍しいかもしれません。
さて、この冬の時期、太平洋側にある鎌倉では空気が乾燥し晴天が多いです。しかし日本海(鳥取)育ちのカミさんからすると、この長閑な太平洋の光景はとても珍しく見えるようです(冬の日本海は灰色の空に荒狂う海!というイメージをもっているようで)。
この時期は、富士山など風景撮影にも適した時期と言われ、晴れた日は多くのカメラマンが稲村ケ崎に訪れます(鎌倉市内でナンバーワンの撮影ポイント)。撮影のテーマ、好み、楽しみ方は皆さんそれぞれですが、比較的に根気を要するのは、日中や夕方よりも早朝の紅富士でしょうか。私自身も素人ながらここ稲村ケ崎で紅富士を撮るべく、夜明け前の湾岸沿いを自転車で走らせ、極寒に耐えながら夜明けのチャンスを待ちます。
「紅富士」とは、富士山に積もった雪に朝日(もしくは夕日)が当たって紅色に輝く現象のことをいいます。富士山頂から徐々に紅色に染まっていく様子は感動もので、いよいよ「来るよ!来るよ!」と心を高ぶらせ「キタ~」とシャッターを押します。
ベストシーズンは、富士山に多くの雪が積もる12月~2月で、空気の澄んだ晴れた日がベターです。事前にその日の「天気予報」と「日の出時刻」などを調べ、当日は日の出時刻の「15分前」には撮影現場に立つような段取りでよいでしょう。
そこで今回のブログ記事では、
夜明けから紅富士へと変貌を遂げる様子を時系列で解説していこうと思います(↓)。
撮影日/2019年2月1日の場合)
この時期、午前6時前ですと、まだ真っ暗で山の様子が全く分かりません。
それが6時を過ぎる頃、東の空が明るくなるにつれ、西側に聳え立つ山々も徐々に露わになり、ここで初めて被写体となる山々のコンディションの良し悪しが分かってきます(画像1)。
日の出の15分前、まず富士山の遥か上空から赤に染め(画像2)、そして空の赤いカーテンがどんどん高度を下げ、遂に富士山の頂上に差し掛かります(画像3)。山頂から紅色に染め上げ、いよいよクライマックスを迎えます(画像4)。富士山の積雪個所(白い部分)を全て紅色に染まった瞬間が “紅富士タイム” となります(画像5)。そして太陽の光が伊豆箱根の山々、そして鎌倉の街にまでさすと(ここが鎌倉の日の出の時間)、もう光の波長は赤から白へと薄くなり、紅富士タイムも終わりを迎えます(画像6)。
運よく(雲がなく)、富士山が全貌を現し、朝日が山頂を真っ赤に照らす …いわば “紅富士タイム” はたった1分ほどで、今がチャンスと言わんばかり多くのシャッター音がアチコチ響き渡ります。
私は雲がかかっていない山々を好みますが、でも実際には雲が全くかかってない “全裸の富士山” を見れる日は意外と珍しく、そう簡単には写真を撮らせてくれません(たとえ天気予報では晴天であっても大抵はどこかしらに雲が掛っているのが殆ど)。成功率でいうなら10回足を運んでも1回あるか否かの程度です。
撮影が終われば、余韻に浸る間もなく各々がすぐさま仕事に・・今日も忙しい1日が始まります。
キレイな富士山が見れた時の感動は計り知れませんが、“満喫” には程遠く、何とも儚い、しかも地味で根気のいる早朝日課でした。
そんな気まぐれな自然が相手なので、ただ努力すれば叶う訳でもありません。勿論、行かないと成せない事が前提ですが、「成すか否かは時の運」と気楽に割切れる術を身につける必要があります。それを可能にするのは、決して気張らずその場に足を運ぶ習慣を作り、その習慣を自身に染み込ませるかですね。周りの方を見てもそんな感じで、気持ちをニュートラルにしているように思えます。
紅富士の数分間、サーファー達の動きがピタッと止まっているように思えます。この紅富士の美しさを誰よりも知っているのはサーファー達なのかもしれません。