★鎌倉淡水魚紀行★ 神戸川物語(第4話)名脇役・ボウズハゼの求愛行動
神戸川でアユを観察していると、同時に多くの “ボウズハゼ” もセットで観察する事ができます。
ボウズハゼとは、清流と海(沿岸)を共にする回遊性のハゼの仲間。大きさは 人さし指ほどでハゼにしては長細い体つきをしており、その姿はまるでトラ柄ドジョウのようです。
特徴的なのはこのマヌケな顔!箱型の四角い顔はどことなくネコザメを連想させ、その下向きな口は掃除機みたいで面白い。これら特徴的なパーツが偶然にコラボして、このようなマヌケな顔に仕上がっているのでしょう。
ボウズハゼは岩についた苔が大好物なので、これら苔をそぎ落とすのに適した形が 「コレ?」なのでしょう。
8月はボウズハゼの繁殖期真っ只中、求愛行動を見る事ができます。
オスはトラ柄の色調がより一層強くなり、ヒレというヒレを全開し、メスに情熱的なアプローチをします。ボウズハゼは警戒心が非常に強く、人影を見るとすぐに岩陰に隠れてしまいますが、その場にジッと待っていれば人間も自然に馴染み、再び現れ ありのままの姿を見せてくれます。
カメラのファインダーの中には、実に多くの生物が存在し、そこには人間が入り込めないもう一つの世界が繰り広げられておりました。
ボウズハゼは、アユ同様に縄張り意識が非常に強く(仲間同士でケンカをしている光景もしばしば)、
生活史だけでなくその性格までもがアユと非常に似ております。しかし、ここまで同じ生息域で暮らし、同じ苔を食べているのにアユとは一切ケンカをしない・・・何とも不思議な関係です。
因みに神戸川上流(西鎌倉駅前)に高さ1m程の堰堤があるので、実質上ここが魚止め(うおどめ)になります。その為、アユ達の遡上はここまでとなりますが、ボウズハゼに関しては腹ビレは吸盤状になっているので垂直な滝でも登ってしまいますので、このボウズハゼに関しては限りなく源流域でも観察する事ができます。
今となっては、ここ神戸川では当り前のようにアユやボウズハゼを観察できますが、実はちょっと昔の神戸川にはかなり汚れており魚の気配なんて全くありませんでした。それがここ近年、下水道の普及による水質改善で多くの魚がこの川に再び戻ってきたのでした。