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江ノ電
フィッシュナビのブログでは、私と出会う魚や生物、そして鎌倉の身近な自然と季節を日常生活に交えて記事にしております。
普段そこにいる誰もが目にする光景ながらも、(当たり前すぎて)見過ごしがちな素朴なネタを見つけ、そこに秘めた魅力を浮き彫りにしていきたいと思います。自然や魚が相手なので記事の更新は気まぐれ!でもコツコツ地道に発信していきますので、読んでくださった皆様にとって何らかの情報になれば幸いです(月に1回/毎月1日に更新します!)。
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★山陰(鳥取大山)里帰り★ 川ガニ(モクズガニ)捕り

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鳥取県ではモクズガニの事を「川ガニ」と呼ばれており、ここで川ガニと言えば100%「モクズガニ」の事を指します。鳥取では捕った川ガニを食べる習慣があり、シーズン(夏~秋)になると地元魚屋やスーパーの店頭でもよく見かけます。各家庭でもカニ捕りは季節の楽しみの1つであって、カミさんの実家の納屋にも例外なくカニ捕セットが備わっておりました。

さて、この木箱は何かと思いますか? この朽ち具合といい、只ならぬ時代の流れを感じさせてくれます。これは捕れたカニを一時的に活かしておく箱で、いわば簡易的な生け簀の役割をしております。驚くべきは、何と50年近く前に作られたもので、3世代にわたり今だ現役で使われており、その中の10年は私も関わっております。

当初、私は「捕ったカニは頑丈なナイロン製のネットに入れておけば大丈夫っしょ」・・・という容易な考えで、捕ったカニをネットに入れて川底においておきました。しかし翌日、破られて空っぽでした(全て脱走)。今度は(反省の意を込めて)念には念を押してネットを3重にしましたが、結果は同じで万事休す・・・。
その一部始終を見かねて、お義父さんが私に「アンタは野生生物の力をナメとる、この箱を使うといい」と、カニ箱を渡され、「フタを閉めてフックを掛ける、さらに大きな石をのせんと、こじ開けて逃げられてしまうけん」と。
初めは、ここまで頑丈で大袈裟な箱でなくても・・・と心の中で思いましたが、細部に至るまで全て理に適っており、使えば使うほど長い経験と知恵が詰まった箱であると実感しました(実践的機能美!)。今となっては、この箱がないと安心してカニ捕りができないほどのスグレモノで、帰省の度に真っ先に確認するのでした。

ここの部落には農家が多く、川から各家庭に水を引き、“自然の洗い場” を設けてあるのが一般的なようです。そこで農作物などを洗ったり、(飲料水以外の)生活用水として使われておりますが、ここで一時的に川カニをストックしているようです。この自然の洗い場は、川から直接引いているわけなので、時折ドジョウやハヤなどがの川魚がひょっこり姿をみせる事も・・・。ここではごく当たり前な光景みたいですが、私が棲んでいる鎌倉では絶対にありえない光景ですし、(魚好きには)この上ない風景で羨ましい限りです。

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モクズガニそのものは私の住んでいる鎌倉にも生息してますが “捕って食べる?” という感覚はありませんでした。それが大人になって鳥取の川で捕れた川カニを初めて食した時、あまりの旨さに感動したのを今でも覚えております。ここでのカニ捕りは「魚釣り」という狩猟的なドキドキ感より、むしろ「栗拾い」のような収穫的なワクワク感があります。

モクズガニのシンボルでもあるフサフサな鋏脚…、これは藻が生えているのではなく地毛、つまり剛毛な腕毛の持ち主といえます。この太く豪快なハサミをよく見ると先端部(茶色の箇所)だけ薄くなっており上下がピタッと噛み合わさる構造になっており、強鋏ながらも実は雑食性で細かい藻などを摘み取るのに適した形状になっております。

内水面において、モクズガニは古来から食用に利用され「がん汁」などが郷土料理として有名です。私の場合は塩茹でか蟹汁にしますが、蟹ミソ(中腸腺)や身は濃厚な味わいで、特にメスの殻の内側に秘めるオレンジ色の内子は究極の絶品といえます。それもそのはず、モクズガニは上海蟹(チュウゴクモクズガニ)の近種で見た目も味もほとんど同じ、しかも日本の川で採れた天然物を食べれるのが魅力ではないでしょうか。

モクズガニは生食禁止です(ウェステルマン肺吸虫の中間宿主である為)。必ず加熱して食べてください。

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