★鎌倉淡水魚紀行★ 神戸川物語(第7話)川の忍者・カワアナゴ
9月になると台風や雨が多くなり、アユの観察は一旦小休止。そんな時は気分転換で下流域を散策してみるとよいでしょう。そこは潮の干満の影響を受け、淡水と海水が入り混じる汽水域の世界へ、生態系もガラッと変わります。
今回は、そんな汽水域に生息する「カワアナゴ」という面白い魚を紹介します。アナゴといっても、実はハゼの仲間で、その第一印象は「大きい」の一言に尽きます。神戸川で撮影したものでも25㎝ほどあり、その長さに先人はアナゴと間違えたのかもしれません。
しかし、こんなに大きいにも関わらず、そう簡単には見つけることができないのは何故でしょう。
その理由は「忍法木の葉隠れの術」と言わんばかりに落ち葉と同化し、時には自ら葉っぱになりきり、川の流れに身を任せ漂うのです。その姿を見つけるのは、魚を主食とするカワセミやサギなどの鳥類にとっても難しいようです。
カワアナゴの撮影時、ちょうどゴイサギと鉢合わせに、私はその狩りの決定的瞬間を逃すまいとカメラを構えましたが、サギは足元にいる獲物をそのまま見過ごし去っていったのです。
命の危機が迫っているのに、木の葉を演じ続けるカワアナゴの役者魂は凄い!私の期待を良い意味で裏切ったのでした。
追伸)
台風シーズンになると、この神戸川が氾濫する光景を目の当たりにしてきました。源流から河口までたった2キロで完結してしまうような小さな川ですが、どうしてここまで氾濫するのでしょうか。
故・井上六郎さん著書「時のながれ、津村の流れ」の津村地区の地形考察によると(一部抜粋)、
「この平地の東西を二つの川が流れ、腰中の近く二俣川で合流し相模湾にそそぐ。この二つの川の源は腰越地区にあり、雨が降ると全域に降った雨は急斜面を駆け下り二つの川に入る。大雨になると本龍寺橋から二俣あたりは完全に湖になる。そして文教堂(現在はファミリーマート)前の県道は,稲束、草履,下駄などが流れる川になった。水は秒単位で増え、近くの人は年に何回もある床上浸水に備える。すぐ増水しあっという間に減る。これが実情だった」と書かれております。
台風が過ぎて水位が戻ると、魚達が何変わらぬ様子で泳いでおります。あれだけの荒れ狂う濁流の中、どうやって凌いでいるのかが不思議でなりません。