鎌倉淡水魚紀行(梅田川編)~まさかのアユ遡上~
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アユの乱舞(アユの食作法か?)
四方八方からの不規則な素早い動きでも、互いにぶつからないのが不思議でならない。
<本文>
梅田川で魚の観察をしていて驚いたことは、オイカワの他に多くのアユがいたことです。「アユが棲む鎌倉の川」、今や夏の風物誌として市民権を得た魚ではありますが、この梅田川のアユに関しては「よくぞここまで上ってきた」と特別な想いがあります。それは、多くの偶然と難所を乗り越え、海から遥々やってきたからです。
今回は、そんなアユの目線になって、川上りの旅をしてみましょう~。
まず、昨年の初冬に生まれた赤ちゃんアユたちは、沿岸域でスクスク育ち、春になると一斉に各河川を上り始めます。因みに梅田川のアユは、江の島に注ぐ境川河口(藤沢市)からエントリーします。境川を上ること藤沢地点で柏尾川との分岐点に差し当たり、柏尾川ルートを選んだアユたちは限りなく上流(横浜方面)へ向かいます。途中の大船地点につくと、梅田川に行くアユにとって最大の難所を迎えます。それは小袋谷川の流れ込み(東海道線の鎌倉踏切付近)のことで、落差と急流がアユを寄せつけませんが、それでも果敢に挑み続けます。
そして見事、難関を突破したアユたちは、支流の梅田川に入り、狭い水路を進み最終目的地となる観察場所に到着します(6月頃)。
そんなアユの賑わいもあと1カ月ほど、秋が深まる頃には、産卵のため海へ下ってしまうでしょう。
<ちょっとナゾ>
この猛暑の時期、日中の平均外気温が約33℃、水温でも30℃を超えてしまい、本来ですとアユが生きることができません。しかし「何故ここでアユが生きていけるのだろうか?」疑問に思いました。そこで今回は、猛暑が続く8月上旬に、上流域から観察ゾーンまでの5地点(A~E)の水温を計測したら、こんな事実が分かりました。
<計測条件>
時期(8月上旬)/天気(晴天)/外気温(33度)/時間(正午)
<測定結果>
A地点:上流域(貯水所近く)=水温26.5℃
B地点:交差点付近=水温29℃
C地点:三菱電機の入口=水温33℃
D地点:三菱電機の出口/観察ゾーン始点=水温26.5℃
E地点:観察ゾーン終点=水温28.5℃
もし何もなければ、この観察ゾーンは、水温30℃を超えてしまう状況です。
しかし、三菱電機の下を潜ることで、水温を下げていたのです。26℃台でしたらアユも何とか生きていける環境なのかなと思いました。暗渠(あんきょ)が一役買っているようです。