創業130年! 西村釣具店(横須賀)~温故知新~
- 2019/11/30 17:55
- カテゴリー:日記
年に一度、横須賀に行く用事があり、その最寄りの横須賀中央駅前(東急)の商店街を歩いていると、只ならぬオーラを発している釣具屋さんがある。ショーウインドゥには、竹和竿や北欧の骨董疑似餌(オールドルアー)がディスプレイされ、釣好きなら誰もが足を止めてしまうであろう。
これぞ知る人ぞ知る「西村釣具店」明治22年(1889年)創業~、今年(2019年)で130年を迎えた老舗中の老舗だ。
温もりのある木枠の引戸をゴトゴト明けると、コンクリ丸出しの地面に、品物は所狭しに陳列され、どこか昔の玩具屋のようで懐かしい。そんな昭和テイストな雰因気は、幼少期にタイムスリップしたような感覚にさせてくれる・・。
陳列の隙間から覗くレジカウンターから「はい、いらっしゃい!」と店主(西村英雄さん)が迎えてくれる。御年80歳、年齢相応の風格を得て、商売人としても円熟期を迎えているようであったが、その話術には一切の衰えがなく、むしろ進化し続けているようにも思えた。この間にも5名の客人が訪れたが、世代問わず和やかにこなす接客術は「お見事」の一言に尽きた。
さて、天井を見上げると巨大な「ロウニンアジ」の魚拓が貼られている。それはまるで畳のような巨体ぶりで、そこには大きさ145センチ、重さ47kg、日本記録と記されている(昭和56年=1981年時点)。いかんせん40年前のものである、劣化で破れたところはテープで補修され、画ピン止めによって何とか原型を留めているが、それでも鑑賞に耐える見事な魚拓であった。
この作成者は不明だが、おそらくロウニンアジのことを知り尽くし、巨大魚に対して相当手練れた魚拓職人であることだけは理解した(店主も同じことを言っていた)。この巨大アジの魚拓は、昭和~、平成~、そして令和への時代を店主と共に過ごし、この天井から客人を見守っているのだから、西村釣具店のもう一つの象徴といってよいだろう。
私が入店する時は、まずはこのロウニンアジの魚拓を拝み、その後、ロウニンアジの話をするのはいつものこと、店主とは全く世代が違うけれど、かつての昭和時代に同じ物を見て、同じように感動したことだけは確信できた。ただ、当時わたしはまだ小学生で、釣り業界の事情を知っているわけではなかったので、私に足りない知識は、店主がさりげなく会話で補ってくれた。この「さりげなく」が、誰もがそう簡単にできるものではないのだ。
今から30年以上前(昭和の頃)には、このように「教えを乞う」お店が沢山あった。しかし平成に入って大激減、もう今は流石に「ない」と思っていた。しかし、令和の時代になっても残っているのですから、もう絶滅危惧種といってよいでしょう。
店主はこの道60年以上、戦後、日本の高度経済成長期の1960年代(昭和30年代~)、平成~、そして令和へのと、日本のフィッシング業界における 黎明期、成長期、全盛期、成熟期、そして衰退期?までの歴史を駆け抜かれた方です。店主のお話を聞くと、当時の時代背景、当時の情勢、当時の事情などを垣間見ることができるでしょう。勿論これら話は、今のインターネットからでは得ることができない貴重なお話ばかりです。
興味のある方は是非とも、メモを持参するといいでしょう(※水曜日は定休日です)。
古きを訪ねて新しきを得る(温故知新)です。